運動が上手くなる意識の向け方とは?体より「外」に注目する研究の話
スクワットをするときは膝を意識して、ゴルフでは腕の振りを意識して。
運動を教わると、体のあちこちを「意識してください」と言われることが多いと思います。
ところが、意識することが増えるほど、かえって動きがぎこちなくなった経験はありませんか。
今回は、運動中の「意識の向け方」について、研究でわかっていることをご紹介します。
「体の内側」と「体の外側」、2つの意識の向け方
運動中の意識の向け方は、大きく2つに分けて研究されています。
内側への意識
ひとつは、自分の体の動きそのものに意識を向けるやり方です。
「膝を曲げる」「肘を伸ばす」「お尻に力を入れる」といった意識がこれにあたります。
外側への意識
もうひとつは、動いた結果として体の外で起きることに意識を向けるやり方です。
「床を押す」「ボールを目標まで運ぶ」「壁に向かって手を伸ばす」といった意識がこれにあたります。
同じ動作でも、言葉のかけ方ひとつで、意識の向く先が変わります。
研究でわかったこと
2021年、アメリカ心理学会の学術誌(Psychological Bulletin)に、この2つの意識の向け方を比べた研究をまとめて分析した論文が発表されました(Chua ら)。
73の研究、合計約1,800人の結果を分析したものです。
外側を意識したほうが、動作が上手くなりやすかった
分析では、外側に意識を向けたほうが、内側に意識を向けるよりも、その場の動作の出来がよく、練習した動きが身につきやすいという結果でした。
この傾向は、年齢や健康状態、運動の経験の有無にかかわらず見られたと報告されています。
また、外側を意識したときのほうが、同じ動作をより少ない筋肉の力みでこなせていた、という分析もあります。
余計な力が入りにくくなる、ということです。
目標は少し遠くに置くとよい
外側を意識する場合でも、体のすぐ近くより、少し遠くに目標を置いたほうが、わずかに良い結果でした。
ただし、この点を調べた研究はまだ多くありません。
結果を読むときの注意点
その後、別の研究者らによる再分析(McKay ら、2024年)で、「良い結果が出た研究ほど発表されやすい」という偏りの影響を考えると、効果は報告より小さい可能性があると指摘されています。
「外側を意識すれば何でも上手くいく」というほど単純な話ではなく、効果の大きさには議論が続いています。
日常やトレーニングでの活かし方
難しく考える必要はありません。
体の部位への指示を、動きの結果への言葉に置きかえてみるだけです。
- 椅子から立ち上がるとき:「膝を伸ばす」より「頭を天井に近づける」
- スクワット:「お尻を後ろに引く」より「床を足で押して遠ざける」
- 腕を上げる体操:「肩を上げる」より「指先で遠くの壁に触れにいく」
意識することを1つに絞るのも大切です。
いくつも同時に意識しようとすると、どれにも集中できなくなってしまいます。
鍛えたい筋肉を意識するのが役立つ場面も
一方で、腕を曲げるだけのような単純な筋トレでは、鍛えたい筋肉に意識を向けたほうが筋肉が大きくなりやすかったという研究もあります。
ただし研究の数は少なく、まだはっきりしたことは言えません。
「動きを上手にしたいときは外側」「特定の筋肉に効かせたいときは内側も試す」と、目的で使い分けるくらいがちょうどよいと考えています。
まとめ
- 運動中の意識は「体の動き」と「動きの結果」の2つに分けられる
- 研究のまとめでは、動きの結果に意識を向けたほうが動作が上手くなりやすかった
- ただし効果の大きさには議論があり、目的に合わせて使い分けるのがおすすめ
どこに意識を向けると動きやすいかは、その方の体の状態や目的によっても変わります。
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